借入金の返済は消費税が課税されない、その理由

借入金を返済しても、消費税は課税されません。
その理由について考えてみたいと思います。

東京都直営市場の消費税課税漏れの話が衝撃

先日、東京中央卸売市場の「食肉市場」が
東京国税局の税務調査を受け、
平成30年度までの3年間で約1億600万円の
消費税の申告漏れを指摘された事件が報道されていました。

この申告漏れの内容がけっこう衝撃で。

食肉市場が、借入金であった都債を返済していたのですが、
返済費として平成28~30年度、元本と利子の総額約22億円を計上。
このうち元本部分を課税仕入れとして計上していたとのこと。

課税仕入れとは、仕入(経費)のうち消費税が課税される取引のこと。

消費税額の納付額の計算は、簡単に説明すると、
売上にかかる消費税額ー仕入にかかる消費税額=納付税額

で計算するので、「仕入にかかる消費税額」について
借入金の返済元本部分の消費税額を計算上出して、
納付額を計算していたため、
本来払うべき消費税額よりも約1億600万円少なくなっていたとのことです。

食肉市場は消費税額を減らすために、わざと間違えたわけではなく、
誤った認識で課税仕入れとして扱ったそうですが、
課税仕入れ!それはないなあというのが感想で、なかなか衝撃的でした。

でも意外と一般的には、
何にでも消費税はかかるという認識なのかもしれないと思い直し、
なぜ借入金の返済は消費税が課税されないのか、
その理由を今日は書いておきたいと思います。

消費税が課税される4つの条件

消費税が課税されるのは、次の4つの条件すべてに当てはまる場合のみです。
4つの条件に当てはまらない場合は、不課税(課税されない)取引とされ
消費税の計算には基本的に入れません。

消費税が課税される4つの条件
①国内において行われた取引であること
②事業者が事業として行った取引であること
③対価を得て行うこと(お金などの見返りをもらうこと)
④資産の譲渡や貸付け、役務の提供であること

基本は事業者が国内で行った取引は、
この4つの条件にあてはまるかどうかで考えますので、
意外にシンプルです。

当てはまれば、課税
当てはまらなければ、不課税

ということ。

特に「対価を得て行うこと」という点が1つのポイントです。

最近は、持続化給付金に始まり、
一時支援金など何かと補助金や助成金の話題が多いですが、
これらも消費税が課税されるかどうかは、この4つの条件で見ていきます。

補助金や助成金は、何か商品やサービスを提供して得られる対価では
ないので、4つの条件のうち「対価を得て行うこと」に当てはまらないから不課税です。

では肝心の借入金の元本返済の消費税ですが・・・

借入金の元本返済に消費税が課税されない理由

借入金の元本返済も補助金などと同様の考え方で、消費税が課税されないのは、
何か商品やサービスを提供して対価を得ているわけではないからです。

単に、お金を借りている、それを返したということなので、
対価性がありません。

そのため借入金そのものも消費税は課税されませんし、
返すときも消費税は当然に課税されません。

支払利息は非課税取引

ちなみに借入金元本とともに返済する利息は、消費税非課税です。

上記4つの条件に当てはまる取引であっても、

・消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないもの
・社会政策的配慮

を理由とした取引は、非課税取引に該当します。全部で17つ。
これらの取引は、課税取引にあたりますが非課税の扱いです。

不課税と違い、消費税計算には影響しますが、計算の話は細かいところなので
今回は割愛します。

非課税取引 17項目
(1)土地の譲渡及び貸付け
(2)有価証券等の譲渡
(3)支払手段の譲渡 銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡
 ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりません。
(4) 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供(登記手数料、特許手数料など)
(8) 外国為替業務に係る役務の提供
(9) 社会保険医療の給付等
(10) 介護保険サービスの提供等
(11) 社会福祉事業等によるサービスの提供等
(12) 助産
(13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け等
(15) 学校教育(授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料など)
(16) 教科用図書の譲渡
(17) 住宅の貸付け(居住用のみ)

借入金の利子については、(4)にあげられています。

 

まとめ

東京食肉市場の消費税計算漏れの話から、
借入金の元本返済がなぜ消費税課税にならないのか
その理由を書いてみました。


▼娘日記(8歳、5歳)

今日は姉妹そろって、そろばんへ
これで上の娘の指を折りながら1つ1つ
足し算、引き算をしている光景も
なくなるのかしら・・・

 


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