発生主義か現金主義かは会計の目的に応じて使い分ける

会計上どういったタイミングで、売上や費用を上げるかについては、
発生主義や現金主義の考え方があります。

現行の会計の考え方のベースには発生主義がありますが、
実際は期中において現金主義で会計処理をし、
期末に発生主義で未払金をたてているような折衷方式のような会計が多いですし、
税理士がついていない場合は、現金主義のまま決算書を作っている場合もみかけます。

会計をする目的に応じて、それぞれの使い方を考えてみます。

やっぱり基本の考え方は発生主義。

発生主義の場合、取引が発生したタイミングで売上や費用をあげます。

売上をあげるタイミングは、例えば、商品を掛けで販売しているような場合、
商品を引き渡した時点(原則は取引相手に商品が届いた時点)となります。

入金が翌月であっても商品を渡しているのだから、
確実に入金があるだろうという段階で売上が上がるということです。
売上の場合は発生主義よりもさらに確実性があるもののみを
あげるという意味で実現主義と言ったりしますが。

どちらにせよ会計の世界では、売上をあげるタイミングは、
実際の入金とは関係がないのです。

費用の場合であれば、
例えば毎月の家賃を支払う場合、9月の家賃は8月末頃に前払いすることが
一般的です。そうすると、8月の支払時には、前払費用の支払として処理をし、
費用ではなく、資産の項目にあげます。費用なのに資産にあげるって、どういうこと?
という声が聞こえてきそうです・・。

ですが、会計の世界では資産です。
来月の場所を借りる権利を8月に取得しているという意味で
資産にあげるのです。換金性はありませんが、
権利金等と同じく広い意味での資産となります。

こういう処理は会計の世界では普通のことです。
面白くないですか。そして話をややこしくしているとも思います。

それはさておき、実際に費用としてあげるのは、9月になってから。
場所を借りるというサービス提供をうけるのは9月だからです。
こうやって毎月の売上や費用を発生主義で認識していくのが、会計の原則です。

これにより日々記帳していくことで、毎月の業績が月初5日以内など早い段階で知ることができ、
次の経営判断に生かせます。また期末1~2カ月前の時点で、期末の着地予測をすることも
可能となり、節税策を打つこともできます。

株式会社や合同会社、またフリーランスの方については、
事業を儲けるためにやっているはずですから、
期中に現金主義で、期末のみ発生主義としているのは非常にもったいないです。

なぜなら、そういった処理をすると、毎月の業績がわからなくなり
月次の推移表を見ても、お金の増減(財産状態)しかわからなくなってしまうからです。

そうなると、一生懸命作った決算書は、単なる税金計算のための表となってしまいます。

本来決算書を作成する目的は、税金計算のためではないはず。
適時に経営判断材料や節税の判断材料として使えるようにしたいですね。

期中現金主義を使ってもいいのは、公益法人等の場合

一方現金主義の場合は、どうなのか、というと、
現金主義でそのまま期末までいってしまうのは、
発生主義を全く無視していることになり、
会計ルールにのっとって会計処理されていないと判断されます。

つまり、その決算書は外部への信頼性がありません。

ましてや、税務署からすれば、現金主義で売上計上していれば、
発生主義で上げるべき売上が上がっていないことになりますので、
税務調査があった場合、売上計上漏れを指摘され、
追徴となるでしょう。

では現金主義の場合は、まったく話にならないか
というとそういうわけでもありません。
会社や個人事業主(フリーランス)の場合はあまりおすすめしませんが、
一般社団、財団法人、学校法人、NPO法人などの公益法人の場合は、
また話が変わってきます。

もちろん公益法人も発生主義がベースにあるので、
理想としては発生主義で処理すべきです。

ただし公益法人の場合は、ある程度1年間の収入が見込めること、
補助金や会費などの入金がある月が事前に予測できること、

支出のある時期も毎月ある程度分かっていることなど、
1年間でのキャッシュの動きを把握することの方が多く、
月ごとに業績を見ていく必要がない場合が多いからです。

予算ももちろんたてますので、月の業績は入金のタイミングによって左右されるから
あまり気にしても仕方がないのです。

それでなくても、収益事業と非収益事業が混在している
ような場合、まず事業ごとに区分しなければならなかったりしますので、
期中も発生主義を採用しているとなると、
会計がややこしくなりすぎるので
これはこれで事務負担が重すぎます。

ですので、公益法人の場合は、期中現金主義、
期末に発生主義に直す処理でも構わないのではないかと思います。

まとめ

会計の売上費用の計上のタイミングは原則発生主義であること、
しかし現実には期中に現金主義で処理されていることも多いことについてふれました。

日々記帳を一生懸命して最後の決算書までたどり着くわけですから、
会計がどういった目的で作られるのかによって、
発生主義や現金主義をどう使い分けるべきなのか
一度考えてみてはいかがでしょうか。

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